【完】冷徹仮面王子と姫。

「でも、ありがとね」


「え……?」



 突然お礼を言われても、何もした覚えがないのに。



「あ」


「予鈴だ」



 校舎内に響く予鈴に、あたし達は自発的に走り出す。


 ただ必死に走っているだけなのに、どちらともなく笑が零れてきた。



 あーちゃんといる時が、やっぱり一番素直に「楽しい」と思えるよ。




「……ま、間に合った…?」



 教室の前に着いたときに、息をぜいぜい言わせながら腕時計を見た。


 中に入ったらちゃんと時計はあるというのに。



「セーフ……」