【完】冷徹仮面王子と姫。

「大丈夫?」


「うん!」



 満面の笑みを浮かべて、あたしは頷く。


 無理やりくっつけようとか、何もそんなことを考えている訳ではない。


 あーちゃんの気持ちが動くなら。少しの協力くらい、惜しむはずない。


 趣味だとか、その他好きなもの等、本人にとって恐らく差し障りのない程度で、教えた。


 あたしと違って男子ともちょくちょく話せる、気さくな彼女だから、このくらいの話はするものだと思っていたのだけれど。


 ……緊張して話せない、だなんてたっぷり共感性のある言葉を、まさか男の子から聞くことになるなんてね。


 メアドも交換できていないと。付き合っているあたしと氷室君ですらお互いのアドレスを知らないのだから、メールに拘らないでもいいのだと、言ってあげた。あたし達が特殊だという事実はさておき。


 更に言えばあたしもそこまでメールが好きな訳でもなく、あーちゃん意外とメールするのは、月に三回あればいい方。


 そんなあたしの携帯に男子のアドレスが入ったのは、中学の時から数えても、五回くらい。高校に入ってからは、今回の瀬能君のもので、初めてであった。


 ただ、そこをあまりにアピールすると、妙な不安を抱かせることになりかねないと思って、敢えて黙っておいた。