【完】冷徹仮面王子と姫。

 五、六時間目、掃除にホームルーム、更には七時間目を経て、珍しくクラス全員が帰ってしまい、あたしは一人で教室にいる。


 あーちゃんは、「まぁ気をつけて」と苦笑いを残してから帰った。何に気をつけろというのか。


 教室のドアが開く音を、あたしの耳は聞いた。


 弾かれるようにあたしは振り返る。予定通りの、瀬能君だ。



「悪い、待ったか?」


「ううん」



 首を振ったところで気づいたのは、氷室君以外の男子と二人きりになること自体、初めてだということ。


 そう、氷室君が初めてだった。……こんな時に考えることではないはずなのに、あたしの中に嬉しさを溢れさせる。


 緊張を誤魔化させる。


 そうしてあたしは、切り出した。



「えと、何?用って……」



 わざわざ放課後教室に呼び出して告げなければいけないことは、一体何なのか。