【完】冷徹仮面王子と姫。

 何も言わずに、冷凍庫から保冷剤を出してくれた氷室君。養護の先生は留守。


 近くの布巾を取って、包んであたしに渡す。


 受け取ってお礼を言って、腕に当てたあたしはそれから何も言わない。


 すると、彼の方が沈黙に耐えかねたように。



「何が…あった?」



 どうにか誤魔化せた気がしていたけれど、そんなことはなかった。


 頑としてあたしから視線を逸らさない氷室君に、あたしの緊張は殆ど絶頂。


 諦めるのが容易った訳ではない。ちらりと盗み見た彼の表情が、あまりに真剣で。



「……ほら。やっぱ…傍から見て、あたしと氷室君って釣り合わないじゃない?」



 まったく、どんな切り出し方か。自分でも呆れる。



「だからあたしが氷室君の近くにいたら…変な目で見られちゃうっていうか」



 我ながら、情けなさに泣けてきそうだ。話がぼやけすぎて、何が何だか訳が分からない。いや、分かられても困るのだけれど。



「どうして行った?」



 唐突にそう聞く氷室君に、あたしは何をどう答えていいのか分からない。


 行った…行った?



「…………」


「予想ぐらいついただろ。いちいち危ないことするようなことをする必要はなかった」