【完】冷徹仮面王子と姫。

「誰だった?」



 その質問にあたしは、ただ首を横に振った。


 ここであたしが答えて彼女たちが叱られて。そうしたら、また何かあるとも分からない。


 とにかく、それを一番避けたかった。



「…とりあえず、保健室に行って休んでなさい。あまりきつい様だったら、親御さんに来て頂くから」



 それ以上追求することなく、あっさりと諦めた先生に感謝する。


 あたしは先生の左について、保健室へと歩いていった。


 とはいえ、その途中にある職員室で、先生はあたしと別れる。一人になると、途端に湧き上がってくる恐怖。


 また彼女たちにあったら、どうしよう。


 また同じような事が、あるのは嫌だ。


 足が重かった。ほんの少しのはずの、職員室から保健室への道のりが、異様に長くて。


 溜息一つと共に、頭を垂れた時、後ろから声が掛かる。



「……及川?」