「土曜のことは絶対言うな」―――丁寧ではないけど大人っぽく、整った字で書いてあった。ぶっきらぼうな中に優しさが隠れる彼そのもの。


 少しでも……駄目、なのかな。淋しく感じた反面、なんとなく分かっていた。


 どうして、そんなこと聞いたところで、ぶっきらぼうな返事一つで済まされてしまうだけ。そもそも、聞けるだけの度胸は持ち合わせていないのだけど。


 ほうとしている間にチャイムが鳴ってしまう。


 無機質なその音は、多少なりとあたしの心を落ち着かせる。


 みんなが一斉に自分の席に向かうのを見るあたしの目は、どことなく冷めていたかも知れない。


 氷室君に向かう視線とは、きっと全く違う。



 幸せと不安と、不安に相応しない疑問。その他諸々、様々な感情が渦巻く心を、見ない振りをして。


 それでもやはり、完全に逃れる事はできないでいながら。


 暇を持て余した手は、二人で勝手に遊びだす。