「…あ、始まった」


「え、本当だ!」



 ……あたしは何と忙しい人間だろうか。一瞬で柵にかじり付き、ショーに夢中に。先程までの思考はどこへやら。


 いるかの可愛さに、ついうっとりしてしまう。つまりあれらは天使。


 気付けば顔も揺るんでいたのだろう。



「…大丈夫か?」



 言っておきたい。それは無自覚で、あたしはまさか自分の顔が大変なことになっているなんてつゆ知らず、なのに。



「何が?」


「………すげえ表情」



 失礼を通り越してもう、これはどんな子であっても、女の子にしていい扱いではない。


 あーちゃんから今まで何を言われようと、ここまで大きな爆弾を受けた記憶はなく。


 口を尖らせ、ついでに頬も膨らませる。


 更なる突っ込みを受けてしまえば、あたしのガラスのハートは完全に粉砕してしまう。


 そのため、ものの三秒でそれは、あたしの顔から取り去られたのだけど。


 これもすごい表情だとか何だとか言われてしまったら、本気で涙が出そうだと思う。