電車に乗ってからも、至極無言の二人。


 いつもだったら気にして、あたしが喋りだすのだけれど。


 ふと気付いたものは、謎の安心感。


 彼のそばにいて、緊張で心臓はがなり立てるけれど、それすらもどこか心地いい。


 身体の芯に響く心音は、身体の波にもっともシンクロして、自身を落ち着かせる。


 この特別なテンポは、彼と居てこそ。


 自分の彼への気持ちを、再確認してしまう。



 学校の日でもないのに氷室君と一緒にいることに、いまだに夢見心地。



 伝わらなくてもいい。想っているだけで、とりあえず今は幸せ。


 氷室君のことが好き、だと。


 本気で、すごく本気で、何度も胸中で叫ぶ。


 ……伝わらなくていいなんて、本当は少し嘘で。


 ほんの少しでも、伝われって、そうどこかで願っている。


 それどころか、胸中では飽き足らず、今にも口にしてしまいそうだ。