【完】冷徹仮面王子と姫。

「ま、まぁ…色々」


「えぇー、教えてくれないの?」



 またも両頬を軽く引っ張られたので、「いひゃいいひゃい」と、ひどく間抜けな声が出る。


 …あーちゃんも、楽しそうに笑ってた。



 それにしても、氷室君のご両親なんて、きっととんでもない美形夫婦なのだろう。楽しみにしているなんて、とんでもない圧力をかけられて。


 同等の美少女を期待されていたらどうしよう。自分は確実に、期待外れだ。


 そこで考える、最悪のパターン。


 一体どんな人なのだろう。氷室君のご両親とは。


 彼に似ていて素っ気ないのかもしれない。


 はたまた、全く逆の性格で、その反動で彼がああいう性格なのか。


 平和な想像と共に、嫌な妄想も、追うように膨らんだ。


 平衡状態が、せめて崩れないように保つのみ。


 ただ、このことに対して、喜んでいいのかはっきり分からなくて。


 きっと鏡を見れば、何とも言えない妙な表情に、変わっていることだろう。