【完】冷徹仮面王子と姫。

「うん!」



 そう思うと、怖くはあるけれど、土曜日が、とても楽しみ。


 氷室君からの、初めてのお誘い。


 ふと気付いた事が一つ。


 「親が」ってことは、つまり彼女の存在を、親に知られているということで。


 つまり、あたしは彼女として、認識されているということになる。


 この事実だけで、あたしの顔を緩ませるには、十分だった。


 溢れんばかりの幸せを、あたしはどうすればいいのか。処理のしようが無いほど。



 それを持ち越して、教室に帰ってしまったものだから。



「一香、大丈夫?」



 呆れた声であたしに尋ねるあーちゃんは、頬を引っ張って。



「顔、緩みすぎよ」


「ほ、ほっへほひうぅ…」


「日本語喋りなさい、日本語」



 ……日本語を喋れなかったのは、他でもなく、あーちゃんの行為のせいなのだけど。分かっているのかどうか。