「そうだよ…。もう、本当に付き合ってると思われてるのか」



 溜息混じりにぼやくあたしの肩を、あーちゃんが軽く叩く。


 その音とほぼ同時にチャイムが鳴り、彼女は自分の席へ戻った。


 そうして出欠を取り、朝課外が始まる。


 ちなみに授業が終わってから思い返せば、授業の記憶はほとんど残っていなかった。


 あたしの席は一番後ろの隅。隣には誰もいない。


 丁度見通しのいい席で、少し遠くを見れば、氷室君の姿がある。


 そうともあればあたしも無意識に、彼を見つめてしまうわけで。当然授業に集中できるはずもない。


 この一週間も、席替えをしてから告白までの日々と、変わり映えはなくて。


 「片想い」のときと、ほぼ同じ授業時間を、ただ過ごしていた。


 それでも、あたしはどうしても。


 「彼女」っていう二文字に、すがっていたいと思う。


 本当は間違ったことなのかも知れないけれど、でも。