「あぁ、一香ちゃん、ケーキは食べる?」


「えっ?」


「昨日、仕事先の方から頂いたの!あまりに多くて食べられなかったから」



 氷室君に手招きされて、耳を口元に寄せた。


 ………微かに感じた吐息に、心臓が爆発寸前になるのだけど。



「――もらっとけ。今母さんの機嫌すごくいいから、今のうちだ」



 小さく小さくあたしは頷いた。


 それに、こんな美味しそうなケーキ、食べない手はない。



「あ…ありがとうございますっ」



 そして、4人そろってケーキを食べる。



 氷室君は迷わずチーズケーキをセレクトした。甘いものが苦手なのか、単に好きなのか。


 あたしの選んだショートケーキの感想を、ここに書いておこう。「素晴らしくおいしい」。


 その絶品スイーツと、時々重なる視線。


 紛れもなく、至福の一時だった。