バッグ片手に席を立つ。

ココには居られない。



出口に視線を向けると、椿と目が合う。



帰ろうとする私に気付いたみたい。

視線が他のホストを探してる。


なんの為に?



当人は接客中。

席を離れるなんてできるワケない。

むしろ、そんな事許されない。



例え、私を引き止める為だとしても、彼には一つも得なんかない。





ついさっき、後悔したばかりなのに。


見つけてくれただけで、



期待する浅はかな自分がまた嫌になる―。




自ら視線を逸らした。


いつまでも居ちゃいけない。

期待してしまうから―――――。


絡んだ視線がほどけたら、椿の瞳に悲しみの色が滲んだように見えた。

(なんで?…どうして傷ついた顔するの?)

私は貴方にとっては他の女性と一緒でしょ?



振り切るように歩き出した私に、フロアの奥から1人のホストが寄ってくる。


「――!!…姫璃チャンだよね?ごめんな。帰らせるワケにはいかないんだよね〜」

そう言って椿の席を指差す。



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