指名席に立つと、やはり椿は微笑んだ。



――――――私に向けたのと同じ顔で。






見なければ良かった。


ひどく、後悔した。



当たり前の事なのに。


私は一番大事な事を忘れてた。




そう、ココはホストクラブ。


女性に夢を魅せてくれる所。


私も夢を魅せてもらった1人に過ぎない。


彼の笑顔も、私に触れた手も、くれた言葉の一つ一つも、


彼にとっては特別なんかじゃない。




いつも通り。





椿はズルくて、意地悪で、最高のホストだね。


だって、あんな少しの時間で私は貴方に


恋をしたから。


ホストの貴方に、――――――恋をした。



今更認めても意味はないし、ホストを好きになるなんてどうかしてる。


いろんな事があって、少し心が不安定だっただけ。


そう思うようにした。



少しでも期待した自分が、

恥ずかしくて、

何故か悔しくて、



可笑しかったから。