緊張していた本当の理由は、樹の返事を待つ事だった。

正直、実感なんてない。

それでも現実に示すものがあって、
私は戸惑いや嬉しさ、不安が入り混じった複雑な気持ちだった。

おそらく、樹もそうに違いなかった。



案の定、予想通りの答えだった。

自分が泣いてる事に気付くまでは。



分かりきってたはずなのに、喜びの言葉がない樹に悲しくなった。
同時に疑問も浮かんだ。


けれど、一番悲しいのは素直に喜べない自分だった。


何事もないように電話を切った。

波間のような街の光が、カーテンの隙間から部屋に差し込む。

溶けた緊張からか、溢れる私の涙は
光に滲んで消えた。




樹、あの時から、

私達は罪を重ねていたのかもしれないね?