それが嫌だってことはないんだけど、前が飛鳥くんだってことは、




「飛鳥ーっ。聞いて聞いてっ。俺、小テストで0点取っちまった」

「バカが。んな大声で笑っていうと、めちゃくちゃ可哀想に見えるぞ」




―――― 祐が近くにくる回数が多くなった。




 祐はあたしに会いにきているわけじゃない。


 それでも、この前より声が近くなった。


 それだけで、あたしの意識は祐に向かってしまう。




 自分でもバカなくらい祐を意識してしまっている。


 そんな自分が嫌いだった。




「恭子も見て見て。すごいだろ」




 笑いながらあたしに見せてきたのは、バツの印がたくさんついた紙切れだった。


 本当にデカデカと“0”の文字が書いてある。


 あたしはそれを見てから、苦々しく笑った。




「あんま見せんなっての」

「だって、俺人生初の0点なんだぞ!」




 苦笑いですらうまくできていたかどうか気になった。


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