危険ナ香リ



 その顔に怯えて、思わず掴まれていた腕に力が入った。




「清瀬?」

「……あ」




 どうした、と聞きたげな顔をする飛鳥くん。


 その顔を見た時に、目が合った。


 ドキリとしたあたしは、思わず目を逸らしてしまう。




「な、なんでもない……」




 そう言うだけで、精一杯だった。


 一度廊下に立ち止まったあたし達の横を人の波が通り過ぎていく。


 下を向くあたしは、通り過ぎていく人達の足を見て、その波の大きさを確認した。




「……そうか」




 飛鳥くんは、そう言ってあたしの腕を手放した。


 それからすぐに、飛鳥くんの足が翻ったのが見えた。


 ……飛鳥くんの声が、いつもより小さくて、そして低かったような気がした。


 見上げると、飛鳥くんの背中が離れていくのが見えた。


 その背中を見て、あたしは何故か罪悪感が生まれた。




 ……それはきっと、飛鳥くんが振り向いてくれようとしないことを、その背中から感じ取ったからかもしれない。




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