「悪い、柚乃。ちょっと清瀬と2人で話させてくんねぇ?」
―――― 飛鳥くんがそう言ったのは、初めてのことだった。
飛鳥くんはいつも柚乃ちゃんや祐が来るとあたしとの会話を終わらせて、2人の会話に入り込んでいた。
そんな姿を見てきていたからこそ、あたしは誤魔化せると思ったのに。
……飛鳥くんの目があたしを真っ直ぐ見つめる。
あたしは、どうしていいか分からなくて、目を伏せて、膝の上で拳を作った。
「え、で、でも」
「柚乃」
「……っ、だ、だよね。うん。たまには飛鳥も恭子と2人で、話したいよねっ」
柚乃ちゃんの方が、見れなかった。
あたしは特にやましいことはしていないのに、柚乃ちゃんの方が見れなかった。
……柚乃ちゃんが飛鳥くんをどれほど好きか、わかっているから、柚乃ちゃんの方が見れなかった。
「清瀬。じゃあ、放課後、教室で待ってるから」
無理矢理約束を結んだ飛鳥くんを、あたしはどうしても見れなかった。
飛鳥くんには、あまり、佐久間先生の話題に触れて欲しくはなかった。
何故、なんだろう。
……きっと、嫌なのかもしれない。
“佐久間”と名前を呼ぶ度に、少し怖くなる飛鳥くんの目が、嫌なのかもしれない。
.
