「すいません。お話がそれだけなら、これで失礼します」
「清瀬さ」
「さよならっ」
ざわざわと音がする。
その音のする方に駆けていく。
「ちょっと待った!」
佐々木さんのその声が聞こえたとほぼ同時に、ドアが開いた。
……あたしが、開けたわけじゃないのに、ドアが開いた。
どうして、と疑問を感じることはなかった。
とゆうより、感じる暇がなかった。
……それよりも、違う意味で、どうして、と呟きたくなった。
「さ、佐久間先生……っ」
白い色が目の前に現れたと思ったら、次にはタバコのニオイがした。
顔を見なくても分かった。
顔を見たら、心臓が大きく跳ね上がった。
そして固まった。
顔を見れば傷つくだけだと思ってた。
なのに。
……ただ、ドキドキと胸が騒ぐばかりで……。
どうしてなんだろう、と思った時 ―――― ガシッと腕を掴まれて、今まで考えていたことなんか、全部吹き飛んだ。
意識全部が、佐久間先生に掴まれた部分に向かう。
ドキドキしてたまらない。
顔が、勝手に赤くなって……
「こんの……くそ女が!」
……へ……?
「お前が掃除サボったら誰が掃除するんだ!?あ!?」
「え。……あ!」
そ、そうだった!
あたし、掃除サボっちゃってたんだ……。
目の前で鬼のような目をしてあたしを見下ろしている佐久間先生を見て、怖くなって縮こまった。
ドキドキなんかしてる場合じゃない……!
そう悟ったあたしは、慌てて謝罪の言葉を口にしようとする。
……だけど。
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