男の人って、最低だっ。
……でもきっと、それを受け止める女の人も……あたしも、最低だ。
「でも」
そう付け足した佐々木さんの声を聞き、ちらりと視線を向ける。
この日初めて、佐々木さんの笑顔じゃない以外の表情をみた。
「今のあの人に、そんな器用なことはできないと思いますよ」
……無表情で嘘つかないでください。
「嘘です!女ったらしの佐久間先生なら絶対に好きでもない人とでもキスできます!」
「僕が嘘をついているように見えますか?」
「はい!」
「……。泣きますよ」
「だ、だって!佐久間先生はそうゆう人っぽいし……」
そこまで言うと、ピタリと佐々木さんの動きが一度止まった。
「“そうゆう人”?」
その部分の意味が気になったようで、首を傾げてあたしに問いかけてくる。
言葉だけではなく視線でも。
「軽い人、ってことです」
だって、ずっと、佐久間先生にはそんな噂がついて回っていたから。
“女の人と歩いていた”とか“美波先輩と付き合ってる”とか。
ああ、あと、“女に困ったことは一度もない”とか、そんな噂を何回も聞いた。
そんな噂を耳にしていたから、尚更佐久間先生に近づきがたくて……好きにはなれなかった。
そんなあの頃の自分を思い出した時、佐々木さんが小さく息をはく。
「あの人には、色んな噂がまとわりついてますからねぇ」
「……はい」
「まあ、大概が当たっている噂でしょうけど」
もし、あたしがもっと噂のことを気にしていたならば、あたしは佐久間先生のことを好きにはならなかっただろうか。
そう思うということは、あたしはやっぱり佐久間先生を好きになったことを後悔しているということなのだろう。
「でも、外れている噂だってあるんですよ?」
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