「……ふぅん」
や、やっぱりなんか恥ずかしい。
頬を赤く染めたあたしは、精一杯佐々木さんの顔をみないように努める。
「あの人にそこまで惚れられるなんて……ちょっと尊敬します」
……なんて言いようなんだろう。
でも……。
「でもあたし、佐久間先生のこと好きだけど……ちょっとムカついてますよ」
だから尊敬されることなんかない。
あたしはただ佐久間先生を好きで好きでしょうがないってわけじゃ、ないから。
「は?」と声を出す佐々木さんの顔を、未だに見ずに、もう一度口を開く。
「だって佐久間先生って、変態だしロリコンだし女ったらしだし」
「惚れてる相手に、なんて言いよう……」
「何がしたいのか分からないし、何を考えてるかも分からないんです。ってゆうか、学校でタバコを吸うってあの神経、なんなんですかね」
「……さあ」
「それにっ」
言いたいことはもっとある。
だけど一番ムカついていることは、ただ1つだけ。
「カノジョがいるのに触ってくるなんて、どう考えてもおかしいと思いませんか?」
キスしたことを、思い出していた。
あれがあたしのファーストキスで……きっと、あたしのこれからの人生の中で一番の汚点になるだろう。
……祐が気持ちもないのに、ただ付き合ってるからなんて理由で美咲ちゃんとキスしたことを“最低”だと言ったことがある。
あたしは、それと似たような最低な行為をしたんだ。
どんなに好きでも、付き合ってもいない人とキスなんかしちゃいけなかったんだ。
「……“カノジョ”?」
「確かに、拒否しなかったあたしも悪いんだろうけど、でもっ……好きでもない相手と、キスだなんて……」
「キス、ですか」
「男の人ってそうゆうものなんですか?好きじゃなくても、キスできるものなんですか?」
「……まあ、そうなんじゃないんですか?」
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