小さく睨んでやる。
佐々木さんはそれを笑顔で受け止める。
……あたしの口から、自然とため息が零れ落ちた。
「……絶対に誰にも言わないって、約束してくれますか?」
「はい」
深い深いため息をはきたい気分だった。
どうして、さっきまで名前も知らないような相手にこんなことを言わなきゃいけないんだろう。
……しかも、とっくにふられてる相手への気持ちを、どうして……。
「で。どこか好きなんです?」
意地悪な無神経悪魔の図書委員に、恨みを覚えた。
いつか天罰がくだるに違いない。
そう思いながら、笑っている図書委員から目を逸らした。
「どこが、ってゆうか……」
声をだしたら、急に恥ずかしくなった。
あまり親しくもない人に、こんなことを話すことに、今更ながら恥ずかしいと思った。
「佐久間先生だから、好きなんです」
佐久間先生の優しいところが好き。
でもきっと、他の人に優しくされても、佐久間先生の時みたいには思えないだろう。
優しくされて、あんなに胸が温かくなるのは佐久間先生だから。
……あたしは、“好きなところはどこか”と聞かれても、“その人だから好きなんだ”と答えるしかなかった。
だって、その優しさは佐久間先生特有のもので、他の誰にも持ち得ることのない特別なもの。
ただ一言“優しいところ”と答えるだけでは何かが足りない気がして……だからあたしはその優しさを佐久間先生そのものだと考えた。
他の人からみたら、“好きなところは優しいとこですと答えればいいだろう”と、そう思われるだろう。
だけどあたしは違う。
きっと他の人と違う感覚を持っている。
ううん。
……他の人は持っている感覚を、たぶんきっと欠いている所為なのかもしれない。
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