危険ナ香リ





 ……図書委員は、どうしてあたしと話したいなんて思ったんだろう。




 ふと感じたその疑問は、頭にこびりついて剥がれなくなる。


 お互いに顔見知り程度の仲なのに。


 共通の話題なんてないのに。


 ……いや、1つあったかもしれない。


 佐久間先生の話なら、あたし達の間で成立するんじゃないだろうか。


 そこまで考えてから“まさか”と思った。




 まさか、図書室に呼び出したのは、佐久間先生の話をするため ――――?




 だとしても、どうしてあたしなんかと。

 それに、話すとしても、一体なんの話を?


 ……図書委員の意図が全く分からない。




 名前は分からない。

 どうしてあたしと話しをしようと思ったのかも分からない。

 そして、意図も分からない。






 翌日。


 そんな状態のまま、あたしは寒い廊下を小走り気味に歩いていく。






 昨日、“待ってますから”と言った彼の言葉が耳に残って離れなかった。


 そんなことを言われたら……行かないわけにはいかない。


 どんな話になるかは分からない。


 その“分からない”という思いが、待ち合わせ場所となっている図書室へ近づく度に、“不安”という思いを増幅させていく。


 不安が募り募って、図書室の前についた時には、心拍数が上がっていた。


 ……少し、早くきちゃったかも。

 やっぱり、掃除に行ったほうがいいかな。

 ……いや。掃除はダメだ。




―――― 今週から保健室掃除だから。




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