当然だと分かっているけれど、でも。
……腹が立つ。
だから唇をとがらせ、顔を背けた。
すると、また笑われた。
恥ずかしさや苛立ちが混ざり混ざって、逃げ出したいというよりここから立ち去りたいという思いが沸いたあたしは、くるりと回れ右をする。
「清瀬さん」
背中にかけられた声は、まだ笑っていた。
って、そういえばなんであたしの名前知ってるんだろう。
疑問を感じ、ピタリと足を止めた。
その瞬間に答えは出てきた。
あの日。
図書室にいた日。
あの日に、佐久間先生があたしの名前を呼んでいたから……きっとその時にでも覚えたんだろう。
「明日、放課後図書室で話しませんか?」
「……へ?」
言葉の意図がよく分からなくて、くるりと振り返る。
すると図書委員は相変わらずの笑顔のまま、
「待ってますから」
そう言って、回れ右をした。
「え、ちょ、待っ」
「恭子ちゃーん?」
「わっ。み、美波先輩っ」
「柚乃が起きたから一緒にご飯でも行ってらっしゃいよ。もうすぐお昼だしさ」
「え?で、でもあたし、お腹減ってないですよ?」
「でも、暇してたでしょ?嘘ついてもダメよ?あたしにはお見通しなんだから」
「う……」
「ってか、今、誰と話してたの?」
「誰って……あ!そ、そうだ!図書委員さんっ」
慌てて振り返るが、そこに図書委員の姿はなかった。
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