危険ナ香リ



 ……む。




「はっ」




 ……むむう。




「えいっ」




 …………と、届かないっ。




「やあっ」




 ぴょんぴょん飛び跳ねて、必死に本を取ろうと頑張る。


 しかし、あと少しのところで届かない。


 本を多くおくのはいいけど、あんまり高い本棚を設置しないでほしいなぁ。


 なんて、不満に思った。




「ぶっ」

「……っ!」




 何回か跳ねると、ついに図書委員に笑われてしまった。


 恥ずかしいっ。

 ってゆうか、そんなあからさまに吹き出さないでほしいっ。


 恥ずかしさから、飛ぶことを止め、熱を帯びていく顔を下に向ける。


 小さく笑う図書委員の声が聞こえる。


 ……やっぱり、この人って意地悪。




「いやぁ、なんと言いますか、ガキっぽいですねぇ」

「……っ」

「せっかく踏み台があるんだから、使えばいいでしょうが」

「え?ふ、踏み台?」




 そんなものが、と思いながらキョロキョロ周りを見回すと、確かに踏み台があった。


 それを見つけた瞬間、顔から火が出るかと思った。


 こんなあたしを見てクスクスと笑う図書委員は、あたしが取ろうとしていた本を難なくとった。




「どうぞ」




 差し出されたその本を取るのは、屈辱に値するのではないかと思い、手を伸ばさなかった。


 それはあまりにも幼稚な行動で、




「……ふ」




 ……笑われるのは、当然のことだ。


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