危険ナ香リ



 なのに、




「その先に行ってもいい本なんてありませんよ?」




 図書委員がそんなことを言うから、ちょうど図書委員の真横でピタリと止まった。


 止まってから気づいた。


 いい本だとか悪い本だとか、そうゆうのはあたしが決めることなんだから、素直にこの意地悪な人の言うことを聞く必要なんかないのにっ。




「そうですね。あれなんかいいですよ」

「あ、あたし、自分で」

「そういえば、佐久間先生も読んでましたねぇ」

「え?」




 素直に図書委員が指さした先に視線と体を向ける。


 って、あたしってば何佐久間先生の名前に反応しちゃってるんだろう。


 もう、本当に嫌になる。




「なんと言いますか、分かりやすいですね」

「え?」




 “分かりやすい”って何が?


 とゆう疑問を胸に図書委員を見ると、彼はにこりと笑い、「なんでもないです」と言った。


 ……気になるんだけどなぁ。


 でも、まあ、あんまり追求するのもなぁ。




「ほら、早く本を取りに行ってはいかがです?」

「え?あ、はい」




 促されて、つい足を動かした。


 ……いいのかな、と、少し戸惑った。


 佐久間先生のことは諦めるって、そう思ったのに……。


 こうして、佐久間先生を追いかけて、本当にいいのかな。


 こんなことをしてたら、いつまで経っても本当に諦めることができないんじゃないかな。




 心の中で、“もうスッパリと諦めるべきだ”とそう呟く。


 そんな言葉とは裏腹に、あたしは本に手をのばしていた。


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