危険ナ香リ





『……うん?』




 イマイチよく分からなかったらしい美波先輩がそう聞き返す。


 でもあたしは、もうこれ以上“ふられた”だなんて、傷口を開くようなことを自分から言いたくなくて、口を閉ざした。




『え?』

「……」

『え?』

「……」

『……え゛!?』




 さっきの言葉で伝えたのは、“あたしが佐久間先生を好きだ”ということ。


 そして、もう1つ伝えたのは、“佐久間先生はそんな気はないんだ”ということ。


 それを理解した美波先輩は、電話越しでも分かるぐらいに戸惑っていた。




『ゆ、夢か。夢か、これ』

「……」

『だ、だって……。な、なんですってぇ!?』

「……せんぱい」

『包丁、包丁準備しとかなきゃ』

「あの」




 ……なにをする気なんですか。


 ってゆうか、言ってることがめちゃくちゃで意味が分からないんですが……。


 と、何故かあたしが戸惑いを覚え始めた頃。






『でも、だって、恭子ちゃん、ついこの間“祐にふられた”って言って泣いてたのに……』






 ……確かに。


 目を伏せて、考え始めた。


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