危険ナ香リ



 きっと、その優しさにつられてしまったんだと思う。




「……っ、み、美波先輩ぃぃ……っ」




 美波先輩に縋るような思いで、泣きながら、そう声を出した。


 あたしは、いくら泣いたら気が済むんだろう。


 そんなことを、頭のどこかで考えていた。




「あた、あた、あたし、……うううっ」

『落ち着いて。ほら、深呼吸』




 言われた通りに深呼吸をした。

 大袈裟だと思われるぐらいに深く息を吸い込んで、肺にある空気をすべて出すように息を吐き出した。


 しばらくそうしていると、ちょっとだけ落ち着いてきた。




「あ、あたし、……あたし、」

『ん』

「さ、さく、佐久間先生に、」

『敦に?』




 少し声が低くなったのは、あたしの気の所為だろうか。


 でも、あたしは今更口を止めることはできなくて、しゃくりあげてから、






「ふら、ふられちゃいました……」






―――― あたしの気持ちと、佐久間先生の気持ちを、そんな言葉で表した。




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