あんなに大好きだって思っていた唯一の友達と、あたしは遊びにすら行っていない。


 ただ、学校で一緒にいるだけ。


 ……よくよく考えてみると、あたし達の関係はとても浅いものだなと思った。




 それからは、ずっと黙っていた。


 あたしも柚乃ちゃんも、何を言おうともせずに、口を閉ざしたままだった。




「ここが恭子の家?」

「うん」




 久々に口を開いたのは、そんな短い会話のためだった。


 まだ誰もいない家に入るために鍵を取り出して、ドアを開ける。


 静かな家の中に柚乃ちゃんを招き入れて、部屋に向かった。


 ひたひたと、歩く音だけが聞こえていた。




「そこに座って、待ってて。今お茶持ってくるから」




 カバンをおいて、柚乃ちゃんに、にこりと微笑んでみせた。


 ……ただ無表情のままじゃ、暗いだけになってしまいそうで怖かったから。


 パタンとドアを閉めて、口元に手を当てる。


 うまく笑えていなかっただろう自分に、心底嫌気がさす。




 紅茶を淹れている最中に、何か食べるものはないかと冷蔵庫を開けた。


 真っ先に目に入ったのは、昨日買った、イチゴタルトだった。


 ……それから目を逸らし、冷蔵庫を閉めた。


 あれは祐にあげるものだもんね。


 誰にも食べさせちゃだめだよね。


 そう納得して、結局あたしは紅茶だけを持って二階にあがった。


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