「清瀬さーんっ」
覚悟を決めた途端に、あたしが苦手な人の声が聞こえて、思わずビクッと肩を震わせた。
祐から目を逸らして声の方向を見ると、気づけばすぐそこに佐藤さんがいた。
その背後で、佐藤さんのグループと……柚乃ちゃんの姿が見えた。
「え、えと……なんです、か?」
どうして柚乃ちゃんが佐藤さん達と一緒にいるの。
困惑を隠せないあたしと目があった柚乃ちゃんは、あたしの側に駆け寄ろうとしていた。
だけど、引き止められている。
そんな様子に目を奪われている中、佐藤さんがあたしの肩に手をおいて、笑う。
佐藤さんとこんなに近づくのは初めてで……キツい香水のニオイが鼻についた。
「佐久間先生と、どんな関係なの?」
―――― 一瞬、息が止まった。
「葛西さんから聞いたよ?おぶってもらったり、家まで送ってもらったりしたんだって?」
……囁くような小さなその声は、ナイフみたいな凶器に思えた。
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