こんなにも簡単に消え去るなんて、思わなかった。




 あんなに苦しい思いをして、諦めようとしても諦められなかったのに……。


 あたしの気持ちの動きについていけない。理解できない。


 ……でも。


 美咲ちゃんへの想いをあたしの前で言った後に、そんな自分勝手なことを言おうとした祐には、腹が立ったことは理解している。


 1人で楽になってしまおうとしていた祐に、とても腹が立ったことも理解している。


 あとは、……ニオイが気にくわなかった。


 祐のニオイが気にくわなかった。


 ……タバコ以外のニオイが、すべて気にくわない。




 佐久間先生に、会いたい。




 でも、連絡先が分からない。


 美波先輩に聞けばすぐに分かるのに、今のあたしは、そんなことは全然思いつかなかった。




 だから、祐が家から出て行った数時間後。


 ようやく動いたあたしは、空が真っ暗なのにも関わらず、誰にも何も言わずに家からでた。


 歩いて行く方法しか、思いつかなかった。




 会ったら、何を話したらいいんだろう。

 泣いてたから目が重たい。もしかしたら腫れてるかも。

 それを言われたらどうしよう。




 ……とりあえず、歩こう。




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