そう聞くと、祐がクッキーを口に入れる直前で止まった。


 入れ損なったクッキーを一度話して、あたしから視線を逸らして目を泳がせている。


 そんな様子を、あたしはぼんやりと見つめていた。




「……飛鳥の、ことで」




 飛鳥くん? が、どうかしたの?


 首を傾げたあたしを祐はチラリと見てから、手に持っていたクッキーを口の中に入れた。


 静かな部屋の中、クッキーを噛む音があたしまで聞こえてきていた。


 ジュースを飲んで、食べ終わったことを表すと、祐はあたしを真っ直ぐ見つめてきた。




「飛鳥は、恭子のことが」

「違うよ」

「……はい?」




 祐が言い切る前に、何を言いたいのかが分かって、とっさに口が動いた。


 瞬きを繰り返している祐から目を逸らして、下を向いた。




「飛鳥くんは、あたしのことを好きなわけじゃないよ」




 “きっと、みんな勘違いしてんだよ”




 そう言った飛鳥くんの姿と言葉が、頭の中に浮かんできた。


 すると自然に、次の言葉が頭の中に流れてくる。




 “柚乃も祐も、きっと佐久間も。俺が清瀬のことを好きだって、勘違いしてる”


 “確かに俺は清瀬のことをずっと見てた。祐が、美咲と付き合った時から”


 “でもそれは好きだからじゃねぇんだ”


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