それからあたしは、腕を引かれながら小さなカフェに入った。


 “嫌われてないの”とか“本当に全部話してくれていいの”とか。


 色々疑問に思うところはあるんだけど、こっちを見て口を開いた飛鳥くんを見たら、そんな疑問達は一気に吹き飛んだ。






―――― その話に、時間はあまりかからなかった。






 目の前に出されたオレンジジュースに手をつけないまま、話は終わった。


 聞き終わったあたしは、何を思っていいのか分からなくて、ぼんやりしていた。




「俺が知る範囲で言えば、こんなとこだ」




 その飛鳥くんの知っている範囲は、あたしが見て知っている範囲と重ねると、納得できる。


 納得できた。


 理解はしてない。


 ……理解すると、悲しくなる。




「ジュース、飲まねぇの?」

「……飛鳥くんは」

「ん?」

「どうしてあたしに、今の話を話してくれたの……?」




 オレンジジュースの中に入っている氷が、カランと音をたてた。


 飛鳥くんはあたしを真っ直ぐに見つめていた。




「泣きそうな顔してたから」




 とても、シンプルな答えだった。


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