しばらくして、下校していく生徒が不思議な目をあたし達に向けてきていることに気づいた。


 まあ、ずっとここに突っ立ったまま話てるんだから、そんな目を向けられてもおかしくはないなぁ。


 急に黙ったあたしを不思議に思った飛鳥くんは、周りを見てあたしの反応に納得したようだった。




「……送っていくから、一緒に帰ろう」

「え?」

「ちゃんとその誤解ときたいし、その無防備なとこも話しておきたいし」

「無防備?」

「とりあえず行くぞ」

「え?う、うん」




 無防備ってなんのことなんだろう。


 隣を歩く飛鳥くんの顔をチラリと見つめてみた。


 真っ直ぐ前を見つめるその横顔を見てからまた前を向く。




「あ……」




 前を向いた途端に目に入ったそれを見て、短くそう声をあげた。


 思わず足を止めると、隣を歩いていた飛鳥くんも足を止めた。




「佐久間先生……」




 白衣を着た佐久間先生が、こっちを向いた。


 直後に目が合って、思わずドキッとした。




「清瀬、佐久間と仲良かったっけ?」

「え、えと。仲がいいってわけじゃないけど」

「じゃあどうした?立ち止まったりして」

「いやあの……。なんとなく?」




 本当に、なんで立ち止まったんだろう。


 立ち止まる必要なんかなかったのに。


 考えても、やっぱり“なんとなく”って理由しか出てこなかった。


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