危険ナ香リ





 次に目を覚ましたのは、話し声が聞こえた時だった。




 いつの間にかベッドの周りにはカーテンが閉められていた。


 起き上がろうとすると、吐き気がこみ上げてきたので口元を押さえてまた横になった。


 そうしていると、自然とカーテンの向こうの話し声が聞こえてくる。




「清瀬なら、起きたらちゃんと送る。だから心配しないでもう帰ったらどうだ?」

「……でも」

「……それとも心配してるのは清瀬じゃなくて、もっと違うことだったりして」




 誰と誰が話しているのか、声だけですぐわかった。




「なぁ葛西。お前はなにをそんなに心配してるわけ?」




 柚乃ちゃんと、佐久間先生……?


 なんの話、なのかな。


 頭痛が蘇って、吐き気が体を占める中、弱々しくそう思った。




「……佐久間先生には関係ありません。あたしはただ純粋に恭子を心配して」

「放課後まで残ってるって?……まあご苦労様なことだな」

「いけませんか?」

「いや。ただ、本当に純粋に清瀬を心配してるだけなのかなって思ってるだけだ」

「……どうゆう」

「葛西は、ここに安藤が来るんじゃないかって思ってたりしてないか?」




 安藤、って、飛鳥くんのこと?


 ぐらぐら、めまいまでしてきた中でそんなことを思った。




「は、はあ?」

「だって、」




 やばい。はきそう……っ。


 ごろんと体を回転させて、うつぶせから起き上がろうとする。






「安藤は、清瀬のことが……」






 カシャン、と音をたてたのは、あたしが持っていた懐中時計だった。


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