「この間、部屋まで送ってくれて、ありがとうございました」
「ああ。どういたしまして」
「……あと」
「ん?」
「あたしの部屋、汚くてごめんなさい……」
お礼しなくちゃ、なんて言ってたけど、実はこっちの方を言いたくて仕方なかったんだ。
だって、片付けもしてないあんな汚い部屋なんか見せちゃったんだもん。
申し訳ないってゆうか、恥ずかしい。
こっそり顔の半分を布団で隠すと、不意に佐久間先生の顔が現れた。
「あれのどこが汚いんだよ。綺麗じゃないか」
「そんなこと」
「お前、本当に汚い部屋ってゆうのを見たら自分の部屋に大いに自信が持てるぞ」
そう言って笑う佐久間先生の手が、あたしの額に乗っかる。
大きくて冷たい手に、なんだかホッとした。
その手が頭を撫でてくると、もっとホッとして思わず目をつぶった。
「ほら。もう寝ろ」
優しい声だった。
声だけじゃなくて、髪を撫でる手も優しいように感じられた。
いつもより、なんだか佐久間先生が優しい。
不思議な気分だった。
だけどそんな気分も悪くなはい。
佐久間先生の手にひたすら安心を感じていたあたしは、頭痛も吐き気も忘れて、眠りについた。
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