何度か深く息を吸って、今度は頭を押さえる。


 ……頭まで痛くなってきた。


 そんな状態なものだから、授業なんて聞いていられなくて、ただひたすら下を向いていた。




 あたしの様子にいち早く気づいたのは、前の席に座る飛鳥くんだった。




「清瀬、顔真っ青じゃん。保健室行くぞ」




 チャイムが鳴ってほんの数秒後に、あたしは飛鳥くんに腕を掴まれて立ち上がった。


 ほんの少し頭が揺れるだけで、頭痛がする。吐き気がする。


 やばいな、本格的に風邪ひいたのかも……。




「あたしが連れて行くっ」




 高い声が後ろから聞こえたと思えば、飛鳥くんの手が腕から離れていった。


 代わりに、反対側の腕を柚乃ちゃんに掴まれる。




「飛鳥は次の授業の準備でもしてなよ」

「……柚乃」

「ほら。行こう恭子」




 どうして、柚乃ちゃんがあたしから飛鳥くんを離そうとしたのか分からなかった。


 とゆうより、そんな疑問は吐き気と頭痛にもみ消された。


 保健室につくまでの間、あたしはひたすら下を向いていた。




「佐久間先生っ。急患です!」

「っ、げほっ」

「……ちなみに言わせてもらいますが、ここは禁煙です」

「わ、悪……ごほっ」




 ……またタバコなんか吸ってる……。


 タバコのニオイを少しでも誤魔化すためなのか。


 開いている窓を見て、また寒くなった。




「で?急患って……清瀬のこと?」




 タバコの火を消して、窓を閉めた佐久間先生の目があたしを捕らえた。


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