中に入って周りを見ると、自然と目に入るのは手を繋ぐカップルだった。
あれが“恋人”の距離なんだと思った。
それから前を見ると、佐久間先生の背中が少し離れた場所にいて慌てて追いかけた。
離れたり近づいたり、不安定な距離だと自分でも思う。
でも、この不安定な距離が、あたしと佐久間先生の距離だった。
「……あ」
エスカレーターに向かっているらしいその時、可愛いお店を見つけた。
なんのお店なんだろうと好奇心がわいて、思わず近づいていった。
茶色の棚に色とりどりに置かれた、ネックレスやヘアピンの数々。
ガラス素材なのかな。
キラキラ光ってて、とても魅力的だった。
そんな中で、ひとつ、目に止まるものがあった。
思わずそれに手を伸ばした時。
「清瀬!」
ガシッと肩を掴まれて、驚いたあたしは思いっきり肩を跳ね上がらせた。
驚きで心臓がバクバクしてる。
そんな中振り向くと、少し余裕のなさそうな顔をした佐久間先生の姿が見えた。
「……勝手にいなくなるんじゃない。焦るだろうが」
……あ。
そういえばあたし、佐久間先生になんにも言わないで着ちゃった。
深い息をはいた佐久間先生の姿を見て、申し訳くなってしまう。
「ごめんなさい。先生……」
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