冗談だと思った。


 冗談に違いないと思った。




「あ、あはは。なに言ってるんですか。デートだなんて、そんな冗談」

「お前誘ってるほうの身になれよ。素直に受け止めろ」

「むがっ」




 むぎゅっと頬をつねられてしまった。


 痛いっ。痛いよ先生っ。


 じたばた暴れてやると、佐久間先生はため息をはいてあたしから手を離した。




「とりあえず行くぞ。朝迎えに行くから待ってろよ」

「ま、待ってろって言われても」

「あ。言っておくけど、美波は連れて行かないからな」

「ええ!?」




 う、嘘。


 待って待って。あたし、デートなんてしたことないのに。


 なっ、なんで付き合ってもない人と……それも“先生”とデートなんて。




「あ、あたし、身の危険を感じます」




 舐められる。

 タバコくさくて死んじゃう。

 その他もろもろ、危険要素がいっぱい。


 危ない。どう考えても危ない。




「別にホテルに連れ込むわけじゃないんだから、そんなの感じる必要ないだろ」

「ホテ……!?」

「ああ、行きたかった?そうだお前ムッツリだもんな」

「ち、違」

「じゃあいいよ。お子様には刺激が強いこと、しようか?」




 あたしは、もう真っ赤になるしかなかった。



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