危険ナ香リ





「まあ確かに。清瀬は不良って感じがしねぇ」




 屈託なく笑う飛鳥くんの顔を見て、距離をおきたくなくなる。


 それにこうして話していると、距離をおくことも忘れてしまう。


 不思議なのは飛鳥くんなのか。それとも、そう思うあたしなのか。


 今はそんなことどうでもいいか。




「飛鳥くんて、意外とよく笑う人だったんだね」

「意外って。それを言わせれば、清瀬だって、意外とよく喋るじゃねぇか」

「そんなに喋らないように見えてるの?」

「まあな。なんか、必要以上に喋らないように見える。まあ、柚乃といる時はけっこう喋ってるか」




―――― 柚乃ちゃん。




 その名前にドキッとした。


 ……どうしよう。思い出してしまった。


 昨日の、仲間外れにされた出来事を。




 学校に行って、柚乃ちゃんに会うのが怖くなる。


 ……柚乃ちゃんが離れていっちゃってたらどうしよう。


 あたし、1人になっちゃう。




「どうした?」




 顔をのぞかれて、ちょっとビックリして跳ね上がる。


 あたしをまっすぐ見る飛鳥くんの表情は、ちょっとだけ心配そうだった。




「どうかしたか?なにかあったなら言え」

「な、なんでもないよっ」

「それがなんでもないような顔かよ。遠慮しねぇで言え」




 ……なんか、飛鳥くんに心配されるって、変な感じかも。


 でも、全然嫌じゃない。


 だからなのかな。




「……あのね」




 勝手に口から言葉がこぼれていった。


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