危険ナ香リ





 あたしが勝手にそう思っているだけかもしれない。


 だけど、やっぱり近づいた。


 さっき歩いていた時に開いていた距離が、今はもうなくなった。


 隣を歩く飛鳥くんの顔を見ると、それに気づいた飛鳥くんはあたしを見て“なに?”と聞いてくる。


 あたしは首を振って答えると、“ふぅん”と返される。




 ……あたしが近づいているのかな。


 でも、違う気がする。


 ……飛鳥くんがあたしに近づいたような気がする。




「あー。学校始まってる。清瀬、もうサボっちまおうか」

「だ、だめだよっ。そんなことしたら不良になっちゃうっ」




 ……あ。


 歩く距離だけじゃなくて、




「いいじゃん。一緒に不良になろう?清瀬」




 ……呼び方が変わった。


 “清瀬さん”から“清瀬”になった。


 距離が、近くなった。




「……不良はやだなぁ」




 この人も、いずれは離れていってしまうんだろうか。


 そう思うと距離をおきたくなる。だけど。


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