「でも、ずっと一緒にいたんだろ?」

「“そうゆう”関係になったら、距離が近くなっちゃうもん」

「は?」

「幼なじみの距離だから、祐とはずっと一緒にいられたの」




 幼なじみって、近いようでけっこう遠いんだよ。


 だって、ずっとそばにいるって言っても、四六時中一緒にいるわけじゃなかった。


 友達のように、一緒に移動したり、ご飯食べたりするわけじゃなかった。




「“そうゆう”関係になって近くにこられたら、きっと祐はどんどんあたしから離れていくに決まってる」




 保っているこの距離から一歩踏み出しただけで、次にはその何倍もの距離をとられてしまいそうな気がする。


 今まで、そうだったように。




「……清瀬さんの考え方、俺にはよくわかんねぇ」




 そう言って頭を掻いた飛鳥くん。




「好きだから近づきたいって思うのは自然だろ。それで近づいていって、どんどん相手のことを知れば……俺はきっと、もっと好きになる」




 そう言ってあたしをまっすぐ見つめる飛鳥くん。


 飛鳥くんは、どうしてこうやって、あたしをまっすぐ見てくれるのかな。


 ……嬉しい反面、どうしていいか分からなくて、戸惑う。


 それに見られることになれていないから、恥ずかしいとも思う。


 だからあたしは、目を伏せることしかできなかった。




「……そう、思われてみたいな……」




 小さく呟いたその声は、風に飲まれて消えていった。


.