最初は美波先輩と柚乃ちゃんに向かっていた視線も、今は佐久間先生に向かった。


 目を引かれた、という言い方がピッタリ当てはまる。




「え、あの、ここ、どこなんですか?」

「あたしの部屋」




 にっこり笑ってそう答えたのは、美波先輩だった。


 あたしは佐久間先生に向かって問いかけていたんだけど……まあいっか。




「なんで柚乃ちゃんが」

「だって、美波先輩と一緒にあれ作ってたんだもん」

「……あれ?」

「そ。ちょっと来て来てっ」




 戸惑うあたしの腕を掴んだ、美波先輩と柚乃ちゃん。


 片腕ずつ引っ張られるあたしはたまに転びそうになりながらも、駆け足でついていった。




 ……途中で佐久間先生とすれ違った時、一瞬目が合った。




 だからどうしたってわけじゃないんだけど、あたしの頭の中に、抱きしめられていた時の様子が浮かんだ。


 ……なんで、あんなことしたんだろう。






「じゃーん!見て見てっ!頑張ったでしょ?」






 リビングまでやってきて、ようやく佐久間先生の家だと気づいた直後、見せられたものに口を開けた。


 それを見せている2人は、にこにこ笑っている。




 テーブルの上には、手作りのケーキが乗っかっていた。




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