そんなことはない。……はず。
ヤキモチなんてそんなこと、有り得ない。
「違いますっ。あり得ません」
強気にそう言うと、佐久間先生の大きな手が下に降りた。
そして無防備な首筋を撫でられ、反射的に頭を仰け反らせた。
くすぐったいからだ。
「でも、安藤と話してるの見てイラついたんだろ?だから睨んでたんだろ?」
「そうだけど……!てゆうか、手!」
「それ、ヤキモチってゆうんだよ」
「違うもんっ!っ、先生、手!」
もうっ!あたしのバカ!
佐久間先生が意地悪しないはずないんだ!
髪を触られた時点で、それに気づいて逃げてればよかった!
「認めろよ」
「違う、もん!」
「じゃあ、なんで睨んでたんだよ?」
「せ、先生、手っ」
もぞもぞ動き、逃げようと体を捻るあたしに根負けした佐久間先生が息をはいて離れた。
負けじとあたしも深い息をはいてやった。
「で?なんで睨んでたって?」
佐久間先生の表情には、少し楽しいと言うような色が混ざっている気がした。
「よく、分かんないけど……。たぶん、佐久間先生がみんなにあんなことしてるんだって、思ったから……」
「あんなこと?」
“馴れている”ことは前に理解した。
“女たらし”だってことも理解していた。
……だけど、あたしはそこまでリアルにそのことを考えてはいなくって……。
佐久間先生が美咲ちゃんと楽しそうに話してる時、不意にリアルにそのことを感じた。
それでムカついた。
―――― あたしにだけあんなことするわけじゃないんだ、って思った。
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