そんな“もし”の話はあたしにとっては“有り得ない”話。
だって、こんなあたしを見てくれる人なんて、相当な物好きだよ。
あたしはとことんネガティブなんだと、改めて知った。
「それが俺でも?」
佐久間先生の表情には、真剣さはなかった。
ただ試しに聞いているだけって感じだ。
「もし、佐久間先生があたしを見てくれてるんなら有り得るかもしれません」
それはやっぱり“もし”の話。
それを聞き終えた佐久間先生は、ふぅん、と言ってしばらく黙った。
その間、後頭部におかれていた手はあたしの頭を撫で続けていた。
いつもは意地悪な手は、今はなぜか優しい。
「って。近いです、先生」
「何を今更」
「タバコくさいです」
「馴れろ」
「無理です」
「なあ清瀬」
「なんですか?」
「さっき、ヤキモチやいた?」
……焼き餅?
って、あたしってば、なんてしょうもないギャグを……。
だって、急に佐久間先生が変なこと言うから、あたしまで変なギャグを……。
「さっき廊下で睨んでたのって、ヤキモチ妬いてたからか?」
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