……佐久間先生は何も分かってない。




 佐久間先生はあたしが祐を好きだって分かってない。




 ねぇ先生。


 あたしが美咲ちゃんに劣等感を感じるのは当然なんだよ。


 だってあたしは、美咲ちゃんより劣っているから、祐の隣を取られたの。


 ……あたしの中身は劣等感だらけなんだよ。




「清瀬は清瀬なんだから」




 髪に絡んでいた指が上へと這い上がる。


 やがてそれは指一本から手の平になり、耳を通り過ぎて後頭部に届いた。




「前に、誰も清瀬を見てくれないって言ってたっけな」




 い、言ってたっけ?


 ……ああそういえば、言ったような気がしないでもない。






「ちゃんと見てる奴もいるんだよ。お前はそれに、気づいてないだけ」






 ……もし、そんな人がいてくれるんなら。


 目を伏せて、それからまた持ち上げる。


 そして、佐久間先生と目が合った。




「……もし、そんな人がいてくれるんなら」




 思ったままのことを口に出すことにした。






「あたし、その人のこと好きになっちゃうかもしれません」






 こんなあたしを見てくれる人が“もし”いるならば。


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