「まあいい。とりあえず来いよ」

「もし行かないって言った場合は」

「舐めるぞ」

「行きます」




 舐められるのは御免だ。


 だって恥ずかしい。


 それでもって、タバコくさい。




「よし、決まり。……じゃあ、2個ほど質問していいか?」




 あたしがここで、嫌だ、と言っても聞くであろう佐久間先生が、足を進めた。


 今いる窓際から離れて、あたしとの距離を詰めてくる。


 佐久間先生は、あたしの返事も聞かずに口を開いた。






「お前が言ってた“美咲”って、安藤美咲のことか?」






 その言葉を聞いて、彼女の顔が浮かんできた。


 可愛い、女の子の顔が。




「……あたしからも、聞いていいですか?」




 佐久間先生から視線を逸らして、床を見る。


 その床に、佐久間先生の影ができた。






「なんで、あたしが美咲ちゃんの話をしたこと、言わなかったんですか?」






 静けさは1秒も訪れなかった。






「言ってどうなる」





.