見えないはずの他人の層

誰かの後ろに幾つも重なる
僕だけに見える  薄暗い層

後ろの層は
怒っている様に見え

次の層は卑しく笑う

更に後ろとその後ろ
ヒソヒソと小声で話す

が聞こえはしない

誰かの後ろに重なる層は
奥行きを増して行き 

対面する誰か
最前列の顔を確認するのだ

創り出す闇の対峙の中
不必要にも層だけは

やけにはっきりと眼下に浮かぶ

疑いの闇 幻の鬼の層
疑心、暗鬼を生ず

そんな僕の心にこそ
弱い鬼がいる

この鬼は、君には
見えているんだろうか




笑夜