美味しくなれ
美味しくなれ

サイフォンを火にかけ
フラスコからロートに
上がるのを見つめながら

ゆっくりと撹拌している
そんな時、想う事

美味しくなれ
美味しくなれ

心を込めて珈琲を淹れる
そんな綺麗な気持ちで

いる訳なんかじゃない

ただ気付けばふと
惚けた頭に浮かぶだけの

美味しくなれ

火を止めゆっくりと
またフラスコへと落ちる
珈琲に成った液体

濃く茶色く彩を付けた
香りを漂わせた珈琲を
どこかの誰かが口にする

無意識な願いは
その舌に届くのだろうか

どこかの誰かは
笑顔でこう言う

ご馳走様。

俺は心を込めて
笑顔でこう返す

ありがとうございました。

無色の日常に溶ける
珈琲豆が彩る様々

日常ってのはこんなもんかな

美味しくなれ
美味しくなれ




笑夜