王子様はカリスマホスト

翌日。

唯菜はずっとぼんやりしていた。

俺たちの言葉にも、ワンテンポ遅れて答えるし、話も全く聞いてない。

ただ促されるままに儀式を進めて。

まるで魂が抜けたような状態の唯菜を、親父も心配していたけれど。

この日が終われば。

この法要が済めば、きっとまた戻るはずだと。

いつもの笑顔を見せてくれるはずだと、そう思っていたんだ。

納骨を無事終え、近くのレストランで食事をしている間もずっとその調子だった唯菜。

それでも親父の問いかけには無理して笑っていた。

こんな状態のときに、なんでこいつは無理するんだろう。

親父に気を使わせないように。

そう思っていることは見ていれば伝わってきた。

俺は、そんな唯菜が心配で仕方なかった。

早く、この日が終われば。

そう思っていたのだけれど。

本当は、終わらせなければいけなかったのはこの日じゃなく―――

唯菜の『悪夢』だったんだ―――。


家に帰り、夕飯を食べている時。

親父が、叔父さんの家で見つけたという携帯電話を唯菜に渡した。

唯菜が驚き、その体が震え始める。

そして―――

その言葉が、唯菜の『悪夢』という名の箱を開けてしまった―――


『あの家の―――買い手が決まったらしい』